LTSpice、便利に使わせて貰っています。Analog Devicesさんには、感謝あるのみです。
ただ、原理や理論を知らずに自己流で使っているため、はたと困ることも良くあります。
最近の悩みの種が、トランスのk(結合係数)です。
例えば、インターネットで検索してみると、マルツオンラインさんの「LTspiceにおける結合係数Kの活用方法について(SPICE入門講座)」がヒットします。
https://www.marutsu.co.jp/select/list/detail.php?id=247&srsltid=AfmBOopV5DVv_SwGIYQZDgOzWrNoBtd2Cf2BIAkUNDkvz-s9gQ81WRxf
そこには『結合係数の値の最大値は「1」です。1で100%の伝達を示します。現実の回路において、100%の伝達はありえませんので、電源回路のトランスの場合、0.9999の値を推奨します。』とあります。
確かに1があり得ないのは分かるのですが、私のつたない経験では、0.9999は盛り過ぎのような気がします。
トーキンのM-521CTをバィファィラ・トランスとして多用していますが、kの設定によっては同じ回路でも、月とスッポンくらい違うことが有るのてす。
明け方うつらうつらしていて、
・だいぶ前に作ったアイソレータは、100MHz辺りに共振点が有った
・コイルを対向させたトランスのシミュレーションには、共振点が無かった
・巻き線間の容量(キャパシタンス)を忘れたのでは?
と思い出しました。
忘れないうちにと思い、さっそくLTspiceを起動してみました。
〇単純なバイファイラトランス
あり得ないk=1
何処までも -0.034dB
マルツさん推奨のk=0.9999
肩は出てきたがディップは無し
〇線間容量の8pFを挿入
あり得ないk=1
共振やディップは無く、8pFは効いていない
マルツさん推奨のk=0.9999
約180MHzにディップ
悲観的なk=0.99
約30MHzにディップ
シミュレーションとは言え悲しい
無効になったインダクタンスの作用か、kの値とディップ(副共振?)の周波数には強い相関があるようです。
ここまで来て、実際の特性を測って、その周波数に(kを動かして)落とし込めば、現物のkが分かるのでは?と思いつきました。
以前作ったガルバニック・トランス風のアイソレータを引っ張り出して、DG8SAQ VNAで測ってみました。(手抜きでキャリブレーションはパス)
なんちゃってガルバニックアイソレータ
ディップは約117MHz
kを動かしながらシミュレーションしてみると・・・
k=0.9993で約118MHzにディップ
と云うわけで、このトランスに関しては、当分"k=0.9993"でやってみます。
―・・・―
なお、このアイソレータの下限と上限はこんな感じです。
下限周波数
上限周波数
私が関心を持っている、40kHz辺りから60MHz辺りまでは、問題なく使えそうです。
また、M-521CTのデータと実測値はこんな感じです。
・M-521CTのデータシート
https://www.mouser.jp/datasheet/2/447/KEM_LF0073_M_500CT-3316882.pdf
・M-521CTの実測値
巻線片側のインダクタンス
175uH
巻線直列のインダクタンス
488uH
巻線間の容量
8.36pF