2025年7月15日火曜日

LTSpiceのトランス結合係数

 LTSpice、便利に使わせて貰っています。Analog Devicesさんには、感謝あるのみです。

 ただ、原理や理論を知らずに自己流で使っているため、はたと困ることも良くあります。

 最近の悩みの種が、トランスのk(結合係数)です。

 例えば、インターネットで検索してみると、マルツオンラインさんの「LTspiceにおける結合係数Kの活用方法について(SPICE入門講座)」がヒットします。

https://www.marutsu.co.jp/select/list/detail.php?id=247&srsltid=AfmBOopV5DVv_SwGIYQZDgOzWrNoBtd2Cf2BIAkUNDkvz-s9gQ81WRxf

 そこには『結合係数の値の最大値は「1」です。1で100%の伝達を示します。現実の回路において、100%の伝達はありえませんので、電源回路のトランスの場合、0.9999の値を推奨します。』とあります。

 確かに1があり得ないのは分かるのですが、私のつたない経験では、0.9999は盛り過ぎのような気がします。

 トーキンのM-521CTをバィファィラ・トランスとして多用していますが、kの設定によっては同じ回路でも、月とスッポンくらい違うことが有るのてす。

 明け方うつらうつらしていて、

・だいぶ前に作ったアイソレータは、100MHz辺りに共振点が有った

・コイルを対向させたトランスのシミュレーションには、共振点が無かった

・巻き線間の容量(キャパシタンス)を忘れたのでは?

 と思い出しました。

 忘れないうちにと思い、さっそくLTspiceを起動してみました。

〇単純なバイファイラトランス

あり得ないk=1

何処までも -0.034dB

マルツさん推奨のk=0.9999

肩は出てきたがディップは無し

〇線間容量の8pFを挿入

あり得ないk=1

共振やディップは無く、8pFは効いていない

マルツさん推奨のk=0.9999

約180MHzにディップ

悲観的なk=0.99

約30MHzにディップ

シミュレーションとは言え悲しい

 無効になったインダクタンスの作用か、kの値とディップ(副共振?)の周波数には強い相関があるようです。

 ここまで来て、実際の特性を測って、その周波数に(kを動かして)落とし込めば、現物のkが分かるのでは?と思いつきました。

 以前作ったガルバニック・トランス風のアイソレータを引っ張り出して、DG8SAQ VNAで測ってみました。(手抜きでキャリブレーションはパス)

なんちゃってガルバニックアイソレータ

ディップは約117MHz

kを動かしながらシミュレーションしてみると・・・

k=0.9993で約118MHzにディップ

 と云うわけで、このトランスに関しては、当分"k=0.9993"でやってみます。

―・・・―

 なお、このアイソレータの下限と上限はこんな感じです。

下限周波数

上限周波数

 私が関心を持っている、40kHz辺りから60MHz辺りまでは、問題なく使えそうです。

 また、M-521CTのデータと実測値はこんな感じです。

・M-521CTのデータシート

https://www.mouser.jp/datasheet/2/447/KEM_LF0073_M_500CT-3316882.pdf

・M-521CTの実測値

巻線片側のインダクタンス

175uH

巻線直列のインダクタンス

488uH

巻線間の容量

8.36pF

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