2024年11月23日土曜日

スモール・ループ・アンテナのアンプ検討

軽いぎっくり腰を起こしてしまいました。

 作りかけのHexBeam、屋上高2Mの仮設状態、文字通りの宙ぶらりんです。

 気分転換に、あるフォーラムの話題を切っ掛けに、受信用スモールループのアンプを作ってみました。

 つい面白くなって、このひと月ほど嵌ってました。


トランジスタ

 トランジスタは、以前に50MHzの実験に使った2SC4703の残りです。秋月電子通商で、UHF電力増幅用として販売されています。

 1GHzのNFは2.3dBで、ローノイズを謳うトランジスタには負けますが、HFには充分でしょう。

 全損失が1.8Wと大きめなのも良いですね。

 何より、3次相互変調歪が-81dB (Vce=10V)というのが魅力です。

 ただ、フォーラムでのアドバイスによると、Vce=5Vくらいで使うのが安全なようです。

 実は、もう少し小ぶりの2SC3357をリールで数百個持っているため、気軽に使っていましたが結構飛ばしていました。

 その原因の一つが、10Vで使っていた所為かも知れません。10Vの三端子レギュレータも死ぬまで使いきれないほど持っていて、深く考えずにセットで使っていたのです。

 そのあたりも確かめたいと思いました。


トランス

 キーデバイスの一つでもあるトランスは、トーキンのM-521CTコモンモードチョークを使います。

https://www.tokin.com/datasheets_distributor/pdf/TOK_LF0073_M-500CT.pdf

 このチョーク、実態はトロイダルコアにバイファイラ巻のトランスです。

 ふと思いついて、ケースの上面に穴をあけて、エナメル線を通して測ったところ・・・

Fig. 1

Fig. 2

 多少ばらつきはありますが、おおよそ約2uHでした。NFBにちょうど良さそうな感じです。

 数回は巻けそうなので、トリファイラは無理でも、入出力のリンクに使えるかもしれません。

 一寸まごついたのは、巻き方とマークの方向がバラバラでした。

 マークをそろえて並べて

Fig. 3

ひっくり返しました

Fig. 4

 穴をあけた上の二つ、左は下からコアに入り、右は上からコアに入っています。取り出していない三つ、左と中は上から、右だけ下から入っています。

 チョークとしては意味が無いのかも知れませんが、ちょっと意外でした。移相が重要なトランスとして使う場合は、要注意です。

 なお、各ポートのインダクタンスは、約185uHでした。

Fig. 5

Fig. 6

シミュレーション

 先ずは、LTSpiceでシミュレーションしてみました。机上の空論と言われそうですが、シミュレーションでダメだったにの上手く行ったためしはありません。

 転ばぬ先の杖にはなるでしょう。hi

 それと、此処を変えるとこうなるのか!と、調整のポイントを探ったり、振る舞いを予習するのは、とても役立ちます。この辺りは、MMANAでも痛感する、シミュレーターのメリットです。


ベース接地差動型+NFB

 フォーラムでは、定評のあるLZ1AQ方式を前提として情報が交わされていました。

 しかし、中華製のHFDYループを含めていくつか試して見ましたが、私の環境ではゲインが大きすぎるようで、うまくいきませんでした。

 後段は省略して、前段のベース接地の差動アンプにNFBを掛けてみたいと思います。


回路図

最終的にこんな形になりました。

Fig. 7

前後しますが、NFB用のL5,L8を0.002uHにして、裸の特性を見ました。

パラ止め用の、コレクタとエミッタの間に入れたC1とC2の10pFやビーズも外します。

Fig. 8
 300MHzで止めていますが、2GHzあたりまでこのまま延びていきます。hi

 それこそ絵に描いた餅ですが、これが2SC4703や2SC3357本来の実力なのでしょうね。


NFBは効くの?

 ところで、NFBって本当に効くのでしょうか。作用や効果を見ておきたいと思います。     

Fig. 9  NFBなし

 

Fig. 10 NFBあり

 ゲインだけ見ると、平らにはなりましたが、損をしたような気分です。

 歪が改善すると言われてますが、どうやって見たらよいのでしょうか?

 正式なやり方が分からないのですが、信号源を一つ追加して、波形をシミュレーションし、fftビューを表示してみました。

 入力は、1134kHzの文化放送と1242kHzのニッポン放送です。設定が悪いのか、なかなか歪まないので入力電圧を0.05Vまで上げてみました。

Fig. 11 NFBの効果

 ゲインは6dB下がりましたが、IM3は約40dB改善するようです。

 鰯の頭も何んとやら・・、ここは素直に信じる事にします。hi

発振止めとVHFカット

 トランジスタ自体の特性は、前で見たように恐ろしく高い周波数まで伸びています。

 うっかりすると、気が付かない周波数で発振してしまうことがあります。おまじないと、不要なVUHF帯のゲインを抑えるため、コレクタとエミッターの間に小さなコンデンサを入れました。

実体配線図

 この程度の部品数だと、シミュレーターをいじっている内に何となく並べ方がイメージできます。あとは部品同士が干渉しないように、実物大のパーツ(茶色)を並べてみます。

 溝(黒色)を掘ってパターンを区切り、要所に穴(赤)を空けて、裏面のベタアースと接続します。

 本当は表裏の2面でパターンを作れると良いのですが、位置合わせが難しくて、宿題のままです。

 最後に、周囲をカット(ピンク色)してお仕舞です。

Fig. 12 ARCADで配置を検討

CNCで切削

 Gコードの用意や生基板のセットする手間は同じなので、何枚かまとめてCNCで削ります。

Fig. 13

掃除

 本当は、削り・穴あけ・切断の作業ごとにそれ用の刃物を使うべきですが、この程度だとφ0.8mmのエンドミルだけでも間に合うようです。

 その代わり、バリ取りや削りカスの掃除、導通やショートのチェックは欠かせません。

Fig. 14

組立

 部品を探すのが手間ですが、ハンダ付け自体はあっという間です。

粗調整

 トランスは出来合いだし同調回路も無いため、調整個所はありませんが、導通チェックと(シミュレーターとの)電圧の照合は必須です。 

 ボリュームを使っていない場合は、抵抗を付け換えて所定の電圧・電流に合わせます。

Fig. 15 2SC4703 x2

Fig. 16 2SC3357 x2

Fig. 17
以前作った2N5109 x2の現在値

特性の確認(宿題)

 ゲインやIMDを確認したいのですが、まだ出来ていません。差動入力の基本が理解できていないので、うまく整合できないのです。

 出力側に30dBのアッテネータを入れた時の特性です。

Fig. 18

 ざっくり-3dBのゲイン(ロス?)になっています。

 ただ、シミュレーションでも信号源の"V1"に50ΩのSeries Resistanceを入れた時の出力は-2.7dBくらいなので、ほぼ合っているようです。

 このあたり、理屈を知らない門前小僧の悲しいところです。orz

動作確認

 しかし、あり合わせの電線で直径10センチくらいループを作ってつなぐと、中波放送はガツンと入ってきました。ループのヌルもしっかり出ていました。


標準用?ループアンテナ

 以前から、アンテナや受信機のAB比較用に使っているアルミ・フラットバー(2x30x2000mm)のループを一つ追加しました。

 台は、ホームセンターで見かけた"コンクリート羽子板付き束石"です。

 以前の二つは小ぶりな方でしたが、強風でひっくり返ることがあったので、今回は大きいほうにしました。

 両端の糊代(ボルト止め部分)はありますが、直径0.65mと称しています。hi

Fig. 19

Fig. 20

 高さや構造など、もう少し工夫できるだろ!と言われそうですが、このループはアンプや受信機の比較が目的なので、アンテナとしての性能には目をつぶって、大きさや形を揃えることにしました。

 ただし、屋上高は5~6Cm高くなってしまったので、誤差の範囲と言えるのか?ちょっと微妙な値です。

Fig. 21 北方向
Fig.22 西方向
Fig.23 
作りかけHexBeamとテスト用ループ

アンテナのSN比較

 Kiwi2で8006kHzのJG2XAを受信し、アンテナを繋ぎ変えながら、Spectrum LabのWatch List and Plotter画面で比較してみました。

Fig. 24

プロットの色は

light Blue: Frequency

light Green: Peak

      Pink: Noise

      White: Peak - Noise

です。

 白は、ピーク(うす緑)からノイズ(ピンク)を引いた、正味の信号の分です。

Fig. 25

 例えば、左から3つめの2SC3357は、2SC4703よりもピークが高いので大きく聞こえますが、ノイズも多いのでSNは少し劣ります。

 やはり定番の2N5109が光ります。が、ダイポールは別格ですね!

 ノイズレベルすれすれ信号では、かなり大きな差が付くことがあります。信号源の方向も影響しているような気がします。ループアンプのバランスの良し悪しが、ヌルのパターンに出ているのかも知れません。

 番外ですが、ついでなのでLF/MF用のミニホイップ(左端)も見てみました。

 ループやDPとは明らかに違っていて、5Hzほど下のスプリアスがピークになってました。 

 J310を3個使ったゲイン抑え気味のアンプですが、ノイズも少なく、なかなかの健闘です。 また、作りかけの3SK291を1個使ったアンプは、シャック内のノイズを拾いまくってますが、外から引き込んでいる同軸に近づけると良く入っていました。プローブや設置しだいでは、J310x3を超えるかも知れません。

 この3つのループとアンプ、3台のWebSDRに振り分けています。

Kiwi 1 + 2SC3357:

http://ja7kbr.proxy.kiwisdr.com:8073/

Kiwi 2 + 2SC4703:

http://21344.proxy.kiwisdr.com:8073/

Web888 + 2N5109:

http://ja7kbr.proxy.rx-888.com:8073/


昨日の夕方、7850kHzで見えていたカナダの時報局CHUの様子です。

Fig. 26

Fig. 27

Fig. 28
 アンプの性能だけでなく、SDR受信機の特性やバイアスTや電源の特性が加味されるので、単体とは少し雰囲気が変わります。

FT8の解読を比較してみると

 実際の受信状況は如何でしょうか?

 10.136MHzのFT8を受信して見ました。

Fig. 29

 多少の凸凹はありますが、概ねSN比較と同じ傾向でした。手法としては、大きな間違いは無さそうです。

 今のところ、それぞれのアンテナに給電しているBIAS-Tと電源が異なるので、そのあたりも気になります。

 午後にでも、競争条件を揃えるために、3ポートのBIAS-Tを作ってみたいと思います。

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